【時評短評 私の直言】高レベル放射性廃棄物の地層処分反対! 原発廃絶を

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大今 歩

 7月28日、経済産業省は、原発の使用済み核燃料から出る高レベル放射性廃棄物を地下深くに埋める最終処分場の選定に向け、「科学的特性マップ」を公表した。火山や活断層、地下資源の存在する地域を除外して可能性のある地域を示したという。
 それによると、日本列島の約3割が地層処分の可能性がある。日本海や太平洋沿岸で火山や活断層のないところは「輸送面でも好ましく、もっとも適した地域」とした。私が暮らす京都府北部も、若狭の原発から近く、日本海沿岸なので「もっとも適した地域」とされている。
 そして9月27日には、大阪市内で近畿と福井の自治体担当者向けの最終処分地に関する説明会が開催された。そして、10月から福島を除く46都道府県で意見交換会を開くという(9月28日「朝日新聞」)。

●高レベル放射性廃棄物とは

 高レベル放射性廃棄物とは、原発の使用済み核燃料を再処理して、ウランやプルトニウムを分離・回収した後、残った放射性レベルの高い廃棄物である。日本では、ガラスと混ぜて固め、高さ1.3mのキャニスター(ステンレス容器)に詰めて処分する、と定められている。ガラス固化体は大変高温なので、30~50年間ほど貯蔵し、一定の温度まで下げた後、地下300m以深に埋設することになっている。
 2010年12月末までに日本の原発で使用した使用済み核燃料を全部再処理してガラス固化体を作ると、約2万5000本になる。ガラス固化体1本に詰められる廃棄物の放射能は、広島原発約30発分にも達する。
 しかも、高レベル放射性廃棄物は、放射能が安全なレベルに下がるまで10万年以上かかる。日本史では今から1万年前から始まったのが縄文時代で、10万年前といえば、ネアンデルタール人の時代であり、日本列島ではその時代の化石人骨は今のところ発見されていない。つまり、10万年前に日本列島で暮らす人類が存在したかどうかも疑わしい。ネアンデルタール人が現代の人類について想像できなかったと同様に、私たちも10万年後はまったく想像できない。
 だから、そんな誰も責任をとれないことは止めることが当然なのに、地層処分の実現をめざすのが、今回経産省が発表した「科学的特性マップ」である。

●NUMOに代わって国が前面に

 2000年、「特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律」が制定された。その事業主体としてNUMO(原子力発電環境整備機構)が設立され、2002年8月から候補地を求めてきた。文献調査(過去における地震などの調査)に応募しただけで、2年間の調査期間中、20億円が交付される。その後、概要調査(地層の実地調査)が行われ、精密調査の後、地下処分施設が操業を開始するのは、50年後だという。
 NUMOは多額の広報費(2011年度、約45億円)を使い、タレントを用いてキャンペーンを行ってきたが、現在に至るまで応募自治体はない。今回のマップは、NUMOに代わって国が選考の前面に立つ方針を示すため公表したものである。

●地層処分の問題点

 第1に、高レベル放射性廃棄物処分のため建設された青森県の六ヶ所村再処理工場は、トラブル続きで操業開始の見通しが立っていないことである。2012年にも、炉内でレンガの剥離片が原因で、溶融ガラスの流下が止まるトラブルの発生により、操業を延期(これまで23回延期)し、2018年上期の完成を目指してきた。ところが今年8月、非常用電源建屋に雨水800リットルが流入するトラブルがあったにもかかわらず、点検日誌には「異常なし」と虚偽の記載をしていたため、またしても操業延期となる見通しである(10月12日「読売新聞」)。このように、日本には地層処分の出発点であるガラス固化体を製造する技術すらないのである。
 第2に、日本列島において高レベル放射性廃棄物の地層処分は困難である。日本以外の原発保有国でも地層処分が検討されているが、フィンランドのオルキルト島(オンカロ)以外は建設が進んでいない。そして、フィンランドの地層処分も地下水が染み出て止められない、という懸念を抱えている。また、フィンランドの地層は19億年前の花崗岩からできており安定しているが、日本は世界有数の地震国で、活断層が国中を走り、火山列島でもある。日本列島には安定した地層はない。地層処分は見直すべきである。

●「暫定保管」と「総量管理」

 では、高レベル放射性廃棄物はどう処分すべきか。日本学術会議が原子力委員会の諮問に答えた2012年9月11日の「回答・高レベル放射性廃棄物の処分について」(以下、「回答」と略す)に基づいて考えたい。
 「回答」は、政策の抜本的見直しを求め、「暫定保管」と「総量管理」を提言している。
 まず「暫定保管」とは、「高レベル放射性廃棄物を一定の暫定期間に限って、その後の長期的期間における責任ある対処方法を検討し、決定する時間を確保するために、回収可能性を備えた形で、安全性に厳重な配慮をしつつ保管すること」である。これについて西尾漠氏は、「地上にせよ浅い地下にせよ、はじめから管理・回収が容易な形で貯蔵をつづける方が、結局負担は小さく、堅実です」(「どうする? 放射能ゴミ」)と述べておられるが、もっともである。
 また、「回答」の「総量管理」には、発生上限の確定と発生量の抑制の2つの意味合いを含んでいる。後者は、原発の再稼働を前提としているので、同意できない。そこで、前者(発生上限の確定)にもとづいた「総量管理」を目指したい。

●地層処分反対、原発廃絶を

 地層処分は私たちの目の前から高レベル放射性廃棄物を遠ざける(そのため再稼働を進めたい政府や電力会社は、地層処分にこだわる)が、技術が確立していない上、地震列島で10万年埋設するという、非常に危険で非現実的なものである地層処分を許してはならない。
 しかし、原発を稼働した結果、約2万5000本分にあたる高レベル放射性廃棄物のガラス固化体を生み出してしまっている現実からは目をそらすことができない。
 「暫定保管」を行うとともに、もうこれ以上、高レベル放射性廃棄物を増やさないために原発再稼働を許してはいけない。そして原発廃絶を早急に進めることが、何よりも大切である。

▼参考文献
・『どうする? 放射能ゴミ』西尾 漠/2012年/緑風出版
・「高レベル放射性廃棄物問題と『現世代の責任』」長谷川公一/『環境と公害』第46巻第4号(2017年4月)/岩波書店

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